百物語 二十一回目「水晶髑髏」

水晶髑髏はいわゆる、オーパーツと呼ばれるもののひとつだ。
オーパーツだって?」
古代の遺跡から発掘されたものの中で、その当時の技術で造り上げることが極めて困難であるとされるものを、そう呼ぶ。
「へえ、じゃあ水晶髑髏はいつの時代のものなんだい」
マヤ、アステカ文明といわれている。
水晶髑髏は水晶で作られた頭骸骨の模型で、とても精巧に作られており下顎の部分をとりはずすことができる。
当時の技術で造り上げるには数百年が必要だと言われていた。
「なるほど、謎の発掘品というわけだ」
水晶髑髏には伝説があり、全部で12個の水晶髑髏がこの地上のどこかにあって、その全てを2012年までに一ヶ所に集めなければ世界が滅ぶそうだ。
「一体、何のためにつくられたんだい?」
その頭頂無にはレンズとしての効果があり、水晶髑髏をとうして光を浴びると催眠効果があるため、マヤ、アステカの司祭がトランス状態になるために利用したとも推測される。
「なんだか凄いものなんだな」
ナイーブだな、おまえ。
「なんだって?」
水晶髑髏は調査の結果、金属製の工具で加工された後が残っており、出土された時の記録も怪しげなため、19世紀になってから作られたものだというのが定説だよ。
「なんだよ、偽物なのか」
ああ、そこがまあ、問題だといえる。
マヤ、アステカ文明の時代に作られたものではないのかもしれない。
ただ、本当に誰が何のために作ったものであるか明確になっているかは正直判らないと思ってる。
「なんだか言ってることがよく判らないのだけど」
世界は一つではないとしよう。
まあ、それはコペンハーゲン解釈や、エヴァレットの多世界解釈から派生する概念なんだが。
おれたちは、その無数に平存している世界のなかから、一つの世界を選択しているとした場合。
奇跡と呼ばれる事象、シンクロニシィティと呼ばれる事象はまあ大体これで説明つくんだがな。
「つまり、真実はアプリオリに無前提にそこにあるものではなく、僕たちが選択するものだといいたい?」
ふん。
おまえほど、ナイーブに世界をとらまえることができれば、さぞかし幸せだとは思うがね。
大体において、そのとおりだ。
水晶髑髏についていえば、どのようにだって解釈が可能だと思っている。
どう選択するのは、世界の側の問題ではなく、それを受け止めるおれたちのほうの問題だと思う。
ようするに。
真実とはおれたちの、こころにある。
おれのいいたいのは、そういうことだ。

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