2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

百物語 六十九回目「イボイボ」

「こまわりくん、ってマンガがはやったじゃあないですか」「ああ」7年ほど前のことだったか。仕事場の裏から出てすぐ向かい側に、朝四時までやってる飲み屋があった。いつも真夜中に仕事を終えると、その店にいって飯を食い酒を飲み、埒もない話をしたもの…

百物語 六十八回目「黒百合姉妹」

昔から変わらず、古本屋が好きだ。昔は、大阪球場のところにあった古書街によく行った。最近は、梅田の駅前ビルにある古書街へ遊びにゆく。古書街は迷路のように思え。いたるところに入り込んだら抜けれない袋小路があるような気がして。丸一日でも彷徨い続…

百物語 六十七回目「アントナン・アルトー」

20代のころの話。よく映画を見た。いわゆるメジャーなもの、芸術的なもの、B級サスペンスやホラー、アニメ。まあ、なんでも見たのだけれど。たまにマイナーな作品の上映のときに。場末のポルノ映画館を一時的に借りて上映されることがある。普段あまりい…

百物語 六十六回目「アルフレッド・ジャリ」

中学生のころ。前にも書いたように、よく殴られた。まあ、おれの性格が悪かったせいもあるのだろうけれど。普通に廊下を歩いているだけで、前から殴りかかってこられたし。階段の最上段で背中を蹴られたりして、あやうく転げ落ちるところだったこともある。…

百物語 六十五回目「シュヴァルの理想宮」

確かそれは、大学受験をする前の日であったと思う。おれは自分の部屋で。なぜか漫画を描いていた。それは、多分中学生のころに友人と馬鹿話をして着想したストーリーで。その漫画に着手したのは多分高校生の終わりごろだと思う。結局、大学に入学したのはそ…

百物語 六十四回目「僕らはなんだかいつも全てを忘れてしまうね」

たん。た、たん。たた、たん。た、たたん、たん。たたん、たたん、たたん。 闇の中に規則正しいリズムが響いてゆく。それは心地よく、僕の心音と同期をとるように律動を作り出す。身体を揺らす振動は、僕をまるで宙に浮いているような、不思議な気持ちにした…

百物語 六十三回目「山童」

子供のころの話である。住んでいた街は、山に囲まれていた。家の前は坂道で、そこを下ってゆくと川があり。その川を渡ると山である。山へ入って遊ぶことはよくあったのだろうとは思うのだが。不思議なことに山の中の記憶はあまりなく。その入り口となる場所…

百物語 六十二回目「ふらり火」

中学生のころの話である。それは、秋のはじまりくらいの出来事であった。文化祭が間近にひかえており。生徒会の役員を諸般の事情からやるはめになっていたおれは。既に陽が落ちて闇につつまれていた学校の校舎にひとり残り。文化祭に向けての雑務をこなして…

百物語 六十一回目「野狐」

数年前の話である。住んでいるところの近くに、それなりに有名らしい密教の寺院があるのだが。その寺院が何年かに一度、秘蔵の本尊を公開することがあり。まあ、せっかくだから見に行ってみようと思い、その寺まで行ってみた。思ったより大きな寺院であり。…

百物語 六十回目「犬神」

学生のころの話である。おれと、うそをつくのが好きな彼と。哲学好きの後輩と三人で話していた。「僕は、全てのことを説明できますよ」哲学好きの後輩は、こう言った。「ほう」おれは、彼と目を見合わせ、まあそういうものかと頷いたのだが。彼は表情を無く…

百物語 五十九回目「高く孤独な道」

僕は、その高い塔の上から、夜のそらを見上げていた。傍らにはあなたいて。穏やかな笑みを浮かべている。黒い幕を貼ったような夜空に、突然いくつもの亀裂が走った。亀裂の奥には、ビロードのような夜空よりさらに深く、濃い闇がのぞいている。それは何物に…

百物語 五十八回目「見越し入道」

中学生のころの話である。おれの通っていた中学は兎に角アナーキー&バイオレンスな学校だったので。まあ、おれの性格の悪さも災いしてか。やたらと殴られた。虐めにあっていたという自覚はあまりなかったというか。まあ、学校というのはそんなもんだろうと…